焼津の旅館ではたらくおじさん日記

キングにはキングの任務がある

財務的観点から考える旅館業の強み

いきなりクソ真面目なタイトルのブログですがw、
今回は、「財務の観点から考える旅館業の強み」について書いてみたいと思います。
 
というのもの、2015年4月から家業を継ぐかたちで旅館の経営をはじめたわけですが、
本はもちろんのことネット上にも旅館の財務に関して書かれた記事をほとんど見つけることができず、
旅館経営の財務を学ぶ方法がほとんどありませんでした。
 
なので、自分で財務に関する本を読んだり、銀行の人に教えていただきながら財務の基本的な知識を実践的に身につけてきました。
※ここで言う財務の知識とは、決算書および試算表の読み方のことです。当たり前ですが、決算書は作れませんw あと経理の知識もほとんどないです。
 
旅館の経営者になってまだ2年弱ですが、その中で多少は”旅館経営の財務”の考え方がわかったきたので、
自分の考えを整理する意味でも、旅館経営の財務的な強みを自分なりの言葉でまとめてみたいと思います。
 
ちなみに、旅館業と一言で言っても、経営形態や事業規模など様々あるので、
この話は「オーナー企業かつ年商が1億円以上5億円未満」の旅館を想定して話を進めます。
 
結論から言うと、旅館経営の財務的な強みは、事業規模に対して現金決済の割合が高いことに尽きます
 
なぜなら、現金決済が多いということは、販売の成立(旅館業の場合は宿泊)と入金のタイムラグが少ないので、支出に先行して現金をストックすることができるからです。
 
1億円以上の規模の旅館の場合、仕入れなどの基本的な商取引の多くは買掛(後払い)にしていることがほとんどなので、取引先への支払いが発生する前に日々の売上でどんどん現金を貯めることができるのです(もちろん稼働が安定していることが前提ですが)。
 
※最近はクレジット決済が増えて、入金サイトが伸びるうえに手数料も取られるから困ると嘆く旅館経営者の方も(僕も含めて)たくさんいらっしゃいますが、クレジット決済は遅くとも1ヶ月後には確実に入金されるので、短いサイトで確実に入金が保証されているという点で現金決済と同じと考えてよいと思います。
 
そして、売掛、いわゆるツケ払いの割合が少なく、また売掛のかなりの割合がクレジットカードなので、売掛が焦げることがほとんどありません。仮にあったとしても経営に致命的なダメージを与えないということは稀だと思います。
 
これが他の業界、主にBtoB(法人向け)の企業だと事情が変わってきます。
 
たとえば製造業やIT企業の場合だと、製品を完成させそれを商品として販売してはじめて売上が発生します。しかし、製造→販売→入金の一連の流れの期間が長いうえに、入金のフェーズのはるか手前の製造の段階で、資材やら人件費などのコストが発生しているため、旅館業とは逆で収入に先行して支出が増えていく財務構造になっています。つまり、売上を回収するまでの間に、製造コストを支払うためのお金=運転資金が必要になります。
 
そして、せっかくコストをかけて作った商品の販売が成立して決算上は売上が発生していても、色々な事情で取引先からの入金が遅れたり、最悪の場合は取引先が倒産してしまい現金の回収ができなくなってしまう、ということも往々にしておきてしまいます。
 
ですので、現金の入金の見込みが立つこと、また支払いに先行して入金があるということは、経営者を精神的に非常に安心させてくれます。
 
話が若干脱線しますが、最近耳にする機会も多い黒字倒産(決算上は黒字なのに、支払いのタイミングで現金がなく支払いが滞り倒産してしまうこと)も、支出に先行して現金収入があるという財務構造をもっている旅館業では起きることはありえないわけです。旅館業で支払いが滞るのは、営業利益が出ていないという単純な理由がほとんどだと思います。
 
ことほど左様に、旅館業の財務構造上、損益分岐点を超える稼働を安定的に確保すれば、キャッシュフロー(収入と支出の差)は常にプラスになります。
 
では、なぜ現金決済の割合が高いことが強みになるかと言えば、旅館業では基本的に現金回収のことは考えなくても大丈夫なので、売上を向上させること(コスト管理をしっかり行っていることが前提ですが)に経営リソースを集中させることができるからです。
 
この旅館業の財務構造を理解したうえで経営の行動計画を立てれば、優先順位のつけ方がはっきりするのではと思うわけであります。
 
ただし、「旅館業は装置産業」と言われるように、初期投資の段階で年商以上の借入をしている会社が多いので、また別の問題もあるのですが。。。
 
とはいえ、中小企業を経営していくうえで経営者たちを悩ませることの一つが”資金繰り”です。中小企業と呼ばれる規模感の企業で、損益分岐点を超える売上さえ確保すれば、他の企業ほど資金繰りの心配をしなくていいというのは、会社経営をしていくにあたって非常に心強い安心材料になると思います。
 
旅館業は儲からないと言われて久しいですが、売上をあげるために何をすればいいかということを真剣に考えれば、まだまだ未来がある業界なのではないでしょうか。